FD STYLEの湯たんぽ。



FD STYLEの湯たんぽは2014年に誕生しました。今からちょうど5年前です。
最初にコンパクトな湯たんぽを見たのはその前年でした。製造するツバメテックの会長が、愛犬にも使えるかと作っては見たものの「小さい」事で誰も扱わないから「おまえに売らせてやる」と言われました。その時はとても売れそうもないなぁと思いました。そもそも、既存の物を売るのはデザイナーの仕事ではないだろうと考えていました。
ツバメテックの会長は面白い人で、以前から「おまえが絵を描いてくれば、俺が作ってやるからそれをおまえが売ればいいろ」とも言われていました。当時の私は具体的な条件を提示された範囲で造形することをデザインと考えていました。
たまたま、スノーピーク本社に山井社長を訪ねる機会があり、本社に併設された店舗でコンパクトな湯たんぽを見かけました。そのとき同行した女性が「かわいい」と湯たんぽを手に取るのです。アウトドアで使う小さな湯たんぽという機能面からしか湯たんぽを見ない私にとって「かわいい」という感覚が新鮮でした。


スノーピークの湯たんぽは燕の別の工場のものだけど、サイズは同じくらいでした。その後ツバメテックから製品本体を借りて、1シーズン自分で使ってみました。インドアでもコンパクトな湯たんぽが十分実用になる事が分かりました。同時にコンパクトサイズは、お湯を沸かすのも簡単で毎日使い続けるのが楽なことを実感しました。

燕のステンレスボトルメーカーが山形のニットメーカーとコラボしてニットカバーで差別化した製品を出していて、それをヒントにニット工場とコラボ出来ないかと考えました。機能だけではない魅力を加えられないか、かわいいという感じられる何かを。幸い新潟県は織物や編物の産地が多く、新潟市のお隣の五泉市はニットが地場産業として知られています。

同じ頃、手拭いを作ってもらって居る藤岡染工場で、新潟市のニットーボーで糸を使ったキッチン雑貨を作れないかと言う話があり、ニットーボー新潟さんの工場を見せて貰いました。何より新潟が港町である事を感じさせる歴史ある工場が素敵で気に入りました。製糸業は多くの産業の始まりでもあり、古いとはいえ、燕の手工業とは異なるものだと感じました。綿をほぐして1本1本の繊維に整え、長さ毎に分けて寄りをかけて糸にする。高品質な綿の繊維は美しく、肌触りも良い。それまで糸について考えたことも無かったので、こうした設備や技術が新潟市に残っていることを伝えたいと思いました。

湯たんぽを作る。(本体編)

湯たんぽを製造するツバメテックは燕市にあります。神子島会長設立し現社長は20代で引継ぎ現在に至ります。FD STYLEの中でも沢山の製品を作ってもらっています。とても信頼のおける工場です。
ツバメテックは主にステンレスの深絞りと呼ばれる加工を用いる製品を得意としています。ブランクと呼ぶプレスで板材を丸く切り取ります。近年ではレーザーも普及して居ますが金型によるブランクは最も一般的なプレス加工です。


ブランクした材料を絞ります。絞り加工は直径と深いの関係で一度に絞れる量が変わります。カップの様な形状の場合は一度では無く複数回に訳では少しずつ径を絞り深さを増やします。絞り加工はプレスの中でもノウハウが必要です。同じような形状をスピン加工やへら絞りと呼ぶ方法でも作る事が出来ます。比較的均一な板厚のパランスが取れた形はプレスによる深絞りの方が向いています。


湯たんぽの上下のそれぞれを絞った後、上方はピアスと呼ぶ穴開けのプレスを行い、挽物と呼ばれる旋盤加工で作られた口の部分を溶接します。その後、下方の絞り加工した部品と溶接する事で本体が完成します。その上でステンレス製品の特徴でもある研磨加工を行います。
 FD STYLE湯たんぽは本体もキャップもステンレス(SUS304)製です。サビに強く丈夫です。キャップを真鍮にしたものもありますが、ステンレスは電位差のある異種金属と触れていると電食と呼ばれる腐食(サビ)を起こします。ネジの感じが柔らかい金属と組み合わせた方が良いのですがサビるのも困るので全てをステンレスで作っています。キャップだけはミラー仕上げです。


ツバメテックは自社の研磨職人がいます。燕では研磨だけを行う研磨屋さんがいて研磨は外注という工場も多いです。以前はステンレス鍋や炊飯ジャーの内釜等が燕でも沢山作られていました。そうした製品は自動研磨も使われますが、湯たんぽは少量生産なので全て手研磨です。若林さんはツバメテックのベテラン研磨職人で、試作はもちろん良い製品は若林さんの手により研磨されます。研磨するバフは毎日仕事が終わると使い終わったバフの周りにニカワを塗り研磨剤をまぶして乾燥炉にしまわれます。数種のバフを使い分け、そのバフ自体も職人が毎日作るのです。

FD STYLEの特徴でもある艶消の黒い耐熱塗装は、ツバメテックの近くMS金属によるものです。フジノスで作られるステンレス鍋もMS金属です。地場産業は1つの工場で完結する事は少なく地域の協力工場で作られますが、こうした地域のネットワークを活用する事で複数の工場で作られた製品に統一感を作る事が出来るのです。


製品が完成する前に溶接不良による漏れが無いか、全量を検査しています。ツバメテックはケトルも多く製造しています。中に水を入れただけで漏れの確認は不十分です。水槽に入れ圧力を掛けた空気を送り込む事で、漏れが無いか確認します。
検査が終わった製品は洗浄され袋に詰められます。この後、梱包場所で個箱にカバーと共に詰められ出荷を待ちます。


FD STYLEが他の製品と最も違う点は、関わる人と役割をオープンにしている点です。燕三条の製品の多くは作り手では無い人が製造元になっています。工場でも自社では製造していない製品を販売しているケースもあります。もちろんルール上は全く問題ありません。しかし、自社の名前で製造する人とそうで無い人の間の心持ちの違いは無いのでしょうか。匿名性はある種のインチキを産む場合もあるし、名前を出すことで職人はプライドを持ったものづくりが出来るのでは無いでしょうか。工場でありながら、他の工場で完成した製品を集めて売っているだけの工場は、使う人から見ればインチキのように感じないでしょうか。
FD STYLEはデザインを担当する私たちと製造をする工場による統一感のあるものづくり。余計なモノの混ざらない小規模プロジェクトです。

湯たんぽの場合は湯たんぽ本体に加えて、カバーも新潟県内で製造しています。


コメント

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