挽物屋さんと作ってみました。

2020年の2月に「ててて商談会」に出展しました。


昨年までは「ててて見本市」という名前で毎年2月に開催されていた展示会ですが名称が変更になり、今年は商談会でした。

展示会には何かしら新製品を出そうと考えていて、今年はいつも商品の部品を加工してくれている株式会社和田挽物の長谷川さんにペンをつくりませんか?と提案して協力してもらいました。長谷川さんとはササゲ工業の
棒さんの紹介で3年くらいのお付き合いです。
 株式会社和田挽物は昨年40周年を機に会社名を変更し、社長が交代して若い長谷川さんが社長になりました。FD STYLEでお付き合いしている工場の経営者は順次代替わりしていて「工場をこうしてい行きたい」という話をよく聞くので提案もしやすいです。有限会社和田から株式会社和田挽物に社名が変わり「挽物」を強くPRしたいのだと考えました。


挽物屋とは旋盤加工をする工場です。産地ではそれぞれの工程が専門化していて、そうすることにより、小規模でも高い技術を使う事が出来るのです。新潟県燕市は本当にそうした小さな工場が集まっていて、そのネットワークで製品が作られます。

そもそも「まとめ屋」と呼ばれる人がいて話をまとめ、製造工程を夫々の会社に振り分けます。その中で規模の大きいものが産地問屋と呼ばれるようになり発展してきたのだと思います。高度経済成長を経て、流通が大きく集中する流れで産地問屋さんも大きくなり、グローバル化の時代になり、数を多く扱わないとならなくなり海外からの調達が中心へと変化してきました。

当然、海外からの調達で良いのであれば産地問屋である必要も徐々に無くなります。後は組織力という事になるだろうし、もちろんそうした沢山の数を扱う仕事というのも産地には必要です。しかし全体としては産地の仕事は先細りで、専門の加工を行う工場となるとそれが顕著です。
こうした流れの中で、それぞれの工場は自分で仕事を確保する事が必要となります。そうした時に中間の加工を行う工場は、自分達の技術を情報発信する事が難しい立場になります。一般的に「下請け」といわれますが、私には「下」である感じはしません。燕に見る技術で私が「凄い」と感じる事の多くは、こうした専門の加工を行う工場なのです。

今回のペンは、かなり以前にThinking Powerさんの開発をお手伝いしてた時に「ぺんてるプラマントラディオのリフィルを使ってペンが作れないか」という話があり、当時は挽物屋さんのあては無く実現できませんでした。和田挽物で長谷川さんが社長になった事でプラマントラディオのリフィルを使ってペンをつくって、自社の記念品として配っても良いのでは?と提案しました。

実際に展示会でも反応は良かったし、蔦屋書店や誠品書店といった取引先もあるので販路も確保できるだろうと考えていました。しかし、コロナ禍となり消費マインドの低下と実店舗は営業すらままならない状況になり完全に販路を失いました。
せっかく工場と初めての自社製品を開発したので、このままで終わるよりもクラウドファンドはどうだろうか?と考えるようになりました。クラウドファンド自体は今までも何度も試してみようと考えましたが、調べる度にネガティブなイメージを持ち実際に試すには至っていませんでした。

クラウドファンドの担当と話すと、まずSNS 等の友人にお願いしてある程度の支援を取付ける事が必要と言われます。身近な人も応援してくれないようなプロジェクトはダメだろうというのも分からなくはない。しかし、それがマストな条件というのはどうかとも思ってしまいます。何社か直接話してみて選んだのはモーションギャラリ―(以下MG)。たぶん私達の様なプロダクトには向かないのかもしれません。今日現在プロダクト案件は私達の1件のみ。


変なテクニックよりも自分達でコントロールしてどの様な成果が上げられるのか知りたいという気持ちが強くMGを選んでみました。もちろん、SNSでの告知もしています。少額ですが広告も使い、どの様な条件を設定すればクラウドファンドのページをクリックしてもらえるか等を試しています。ネットだけでは無く、新潟市長を表敬訪問したり、地元の新聞に取材をしてもらったりと話題を作ったりしています。ただ想像した通りには支援に結びついたりしてはいません。

私達は小規模ながらD2Cでの流通を目指して活動して来ました。クラウドファンドは本来その為のプラットフォームだと考えますが、現実には記事を書いたり、写真を撮ったりという手間がかかる事から中間の業者を使うケースも多く見られます。これは、既存の流通における産地問屋と同じことだと考えています。ネットの普及は作る人が手間さえ惜しまなければ使う人に考えを伝える事が出来るのです。

私達デザイナーはその中心的な役割を果たすことが出来る。そのモノは誰の何を解決するために創られたのかを考えたのはデザイナーであり、伝える為の手段も自ら創りだすことが出来ると考えるからです。

このペンはペンとしての機能である書き心地は既成のモノを使っています。ペンはどれも目的に対しての違いは少ない。それでも価格は安いものから高いものまであります。価格の安いものは書き心地が悪いのでしょうか?悪いとすれば多くの人に支持されるでしょうか?トラディオプラマンは海外でも人気のサインペンです。ぺんてるによって40年以上製造されています。フランスでは子供たちが将来万年筆を使う為の練習用としても使われていると聞きました。書くという行為において優れていないとすればそれほど多くの人が、長期にわたって支持するとは考えられません。


私達は優れた書き心地はそのままに、見た目の満足度の高いペンを造るために、挽物の技術が使えるのではないか?と考えました。それがこのペンです。
トラディオプラマンの書き心地を従来と違うシーンに広げられたら良いなぁというのがコンセプトです。素敵な空間でメッセージを残す場面に相応しい見た目に、トラディオプラマンの書き心地を組み合わせました。
真鍮のキャップはペーパーウエイトのようにも使えます。

良かったら私達のクラウドファンドにご支援いただけると幸いです。




新潟県燕三条の挽物屋がつくるカスタマイズ文具。

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