デザインと補助金の活用

思い切って書きます。

昨日のグッドデザインエキシビションの控室でも話題になりました。

地場産業の製品開発に補助金が使われているケースがあるって知ってますよね。

最近、多くの友人デザイナーはこれを批判します。流通系の経営者の友人からも同様ですね。

自分のお金を使わずに行政が呼んできたデザイナーとモノづくりを行い失敗例が多く残ってきたからです。自分の原資を使わず、開発するモノが上手くいくわけ無いと。同感です。

その結果は、デザイナーとモノづくりをしても良い事無し。という実績が出来上がりました。
(時にはデザイナーアレルギーとも思われる現象も生み出します。)

私も20年以上デザイン事務所をやってきましたが、散々苦しめられたし、今でも続いています。

現在活躍している同年代から下の年代のデザイナーは「補助金」を嫌います。

お酒の席で、私が「補助金」に前向きでもっとも力を入れているというと、それはもうひどい事になります。大抵説明しても(酒の席なので)ちゃんと聞いてもらえないので書いてみます。
(以外と補助金についてちゃんと分析してる人っていないんだなぁと私は感じています。)

私が(実際に様々に参加した経験の上で)考える問題点は、

●製品開発の基本部分を行政や独立行政法人が行う事だと考えています。

通常、企画内容を行政とデザイナーが考えて(どちらかの考えの強弱はあれど)企画内容が決まったものにメーカーが参加する開発が多い。用意されたものにメーカーが合わせる格好。

モノづくりの素人と売る事に責任を持っていないデザイナー(デザイナーとは本来そう)、仮にそこにプランナーや流通関係者が加わったとしても「売る事」に責任は持たないケースが普通。

メリットのある企業は限られるので参加している企業は毎年同じ。使ってる費用と成果は全く合わないが税金をつかてるので問題ない。税金が使われなくなればそれで終わり、残るものは少ない。あるとすれば「デザイナーは役に立たないという実績」。

見方を変えればOEM先が変わっただけで、そのOEM先は売る事に責任を持っていない。メーカーに自覚があれば、参加自体は有意義だったりもする。生かせるメーカーは限られるのではないだろうか。

私が活用している経済産業省のプログラムはこんな感じ。
(実行している窓口は不思議と上と同じで担当者が違う)

●製品の企画はメーカーが行う。これに私が参加する。
通常1年か2年くらいなので、製品を作る為の必要な情報収集(と言ってもメーカーとデザイナーだからどちらもプロ)と予算を含む計画を立てる。OEMを中心にして来たメーカーでは、製品は作れるが、市場を創造する事とその市場へ向けたアプローチに「製品」以外に何が必要で重要かが判断できない。冗談に聞こえるかもしれないがメーカーなのに価格すら決められない。

OEM体質のメーカーは、具体的にこの価格で作れ!と言われれば何とか出来るのだが、自分たちの作るモノの価値を創造する事をしてこなかったから。

これらを企画書にまとめ、それぞれに予算をつけ、事業化後の販売計画を作成します。
一定の根拠ある「数字化」する事が継続的な開発型への転換とOEM体質からの脱却につながると考えています。

その上でこの計画を行政等にプレゼンテーションし補助されるかどうかが決まります。
(可能な限り私が行います。)

採択された後も行政が用意したチェック機能(中間報告等)にちゃんと説明と報告をする事で事業予算の半分から2/3が開発計画が完成して支払われます。(全額は出ない)

私の場合、万が一計画で通らなくてもそのまま進める前提。予算計画や販売計画を見直ことくらいは協議しようと思っています(幸い一度も有りません)。

商品を開発する原資としての補助金を貰う事が目的ではなく 、企業体質を変える為にデザイナー(に限らないが)と組んで新しい事に挑戦する事が目的なのです。著名でもない私が少しでも多くの時間(デザインワーク)小規模のメーカーとの開発に向ける手段でもあり、それでもこの手間自体は大きな負担でもあるので同一企業と何度も 行う事は有りません。メリットが分かった上では事業計画にしたがってデザイン予算をつけてもらいます。

コンサルタントでも無い私が製品プロモーションを行う時は、上記の計画を遂行する事にも責任を負っている(と感じている)からです。私達も必死です。また、デザイナーとメーカーでは役割が違う時も有ります。


補助金にも問題がある事は事実です。でも有効に活用する事は大切だし、より多くの優れた開発計画からより優れたモノが選ばれ、国や地域の活力を作るきっかけになる事につながれば「意味がある」と考えています。

でも、普段のデザイン費用でやればイイでしょ、というのが普通ですよね。分かっているけど、そこが私と地場産業の力の足りないところで補助金の存在理由だと考えています。

批判は呑んだ時にのみ受けつけます。笑

コメント

  1. かなり興味のある内容で知りたい分野です。
    しかし結局これは・・・「何をするか?」ではなく「誰がしているのか?」ってことですよね?「楽しくて面白い人」がやってる事はうまくいきますよ!「つまんない人」がしている事は大概つまらない結果が残るだけなのでは?「ゆとり」が有り過ぎる世代にはなかなか解らないのかも知れませんね。そこが逆にチャンスに感じます!

    返信削除
  2. ありがとうございます!
    今年は三条市の補助金のお手伝いをする事になりました。
    企画から参加させて貰っているので、とても楽しみです。4/16に第一回めのセミナーです。セメントプロデュースデザインの金谷君にお願いしたら来てくれる事になりました。流通について私も一緒に勉強したいと思っています。
    ブランド開発なんて有効利用できそうですよね。

    返信削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

鉄フライパンの安全性について

金属も色々あって食品に触れる時、どの様に考えるかという事。

百年物語の鉄フライパン