良く切れる花ハサミ「スマートシザー」

2月のギフトショー以降八ヶ岳倶楽部で取扱いが開始された「スマートシザー」好評をいただいているようです。3月の新潟伊勢丹での催事でも良く売れました。

ただこの商品売り場が少ないのです。普通にホームセンターに置くだけでは売れません。
売れる方法としては実際に切ってもらうに尽きます。


スマートシザーは独自の片刃構造。製造するのは新潟県長岡市(旧与板町)にある株式会社カバサワです。


一見しては分かりませんが、最新の設備を備えた鋸を製造するメーカーです。ここの社長が高枝切ばさみを作ろうと少しの力で楽に切れる方法を考えていてたどり着いたのが独自の片刃構造です。


旧与板町は利器工匠具の製造で有名なところです。樺沢社長も与板の代々伝わる鋸鍛冶職人の最後の職人ともいうべき人です。写真の左は皇室献上された鋸と同じもので刃付けは社長がしたそうです。昔から伝わるものづくりを色々直に聞けることが今日の私を支えてくれています。


真中がスマートシザー、右が似た構造のアンビルと呼ばれる剪定ばさみ。左は花ばさみとして代表的な坂源のハンドクリエイション。樺沢社長から赤い線で示した角度を持たせる事が強い力が入ると教えられました。何故か理解できていないのですが、確かに切りやすくは有ります。
3本を比べた時いかにスマートシザーがコンパクトか分かりますよね。だからスマートシザーというわけではなく、スマート=賢いという所から取りました。それは、独自の片刃構造がとても理にかなっていて賢いハサミだからです。


枯れた固い木を切ってみた時も感じられます。写真はスマートシザーで切った時。綺麗に年輪が確認できますよね。


普通の鋏で切った場合断面の真ん中くらいに刃と刃が重なり合って切れる峰にあたる部分が出来ますよね。切る力もそれなりに必要です。


握力にもよりますし、花ハサミですから太い枝を切ることを推奨はしていません。花の導管を潰さないので花が長持ちです。分かっていても、つい太い枝を切ってしまいたくなるんすよね。


分かり難いですが、右がスマートシザーの切断面。左が普通の鋏(ハンドクリエーション)です。
さらに、この手の鋏は焼き入れとコストの問題で鉄製のものがほとんどです。


錆を抑えるためにメッキしたり塗装したりします。メッキの方が固く錆には強いですが刃には使えません。刃はフッ素加工するものも多いです。ですが、刃先まで塗装したら切れなくなるので刃の先端は鉄(鋼)が露出しています。


使い終わったらきれいに拭いて、軽く油でも塗っておけば良いのでしょうが錆びないとは言えません。ハンドクリエーションは白いフッ素加工しています。
 

スマートシザーはオールステンレス製。刃の部分は焼き入れできるSUS420J2というステンレス。刃の厚さは1.2㎜です。そもそも刃の切る部分は先端だけですよね。では刃の厚さは何のためかと言うと一般の鋏構造では刃と刃が開いては切ることが出来無いからです。


刃と刃をくっつけるために刃の厚さが必要です。しかし、木の葉の厚さが切り進む上では抵抗になるのです。ある程度太さの木を切るとき最初に刃が入りますが、その後切れないのは何故でしょう?刃の先端が切れないのでしょうか?違います刃の厚さの分木を避けて進まなくてはなりません。それが抵抗になって切る事が出来ません。


スマートシザーはナイフとまな板の関係でものを切ります。日本人ならネギやキュウリやニンジンをハサミで切りませんよね。切れる刃物はある程度切り進む事が出来るのです。


最初に紹介した通り、このハサミは与板の鍛冶職人の経験と技術で出来ています。刃を良く見てもらうと分かりますが、独自の両刃付けがされており2段刃になっています。(刃付けの途中から角度を変えて砥いでいます)製造には最新の機械を用い、デザインは私がしているので製品だけ見るとそれが感じられないかもしれません。インサートしている金具も一点一点燕の研磨職人が磨いています。

福島県の農家の方が使い込んだスマートシザーです。毎日2時間以上使い続けているそうです。これ以外の刃物は重くて切れないて疲れる。スマートシザーが一番良いと喜んでもらってると樺沢社長が嬉しそうに話してくれました。

刃を切ってるところは刃の先端で、あの厚さは切れ味や耐久性とは関係ないのです。刃と刃が開いたら切れなくなる鋏構造の欠点を補うための厚さなのです。

スマートシザーのプラスチック部分はポリプロピレン(PP)にガラス繊維を混ぜて強化したものです。ガラス繊維を混ぜる事は金型や成形機の内部が摩耗するので嫌う人もいます。カバサワではその為に縦型の成形機を導入し自社成形を行っています。

2009年の発売当初、バネの部分は樹脂製でした。ポリアリレート樹脂という珍しい樹脂を用いて工業試験では100万回の試験をし発売していたのですが、折れるものが出てしまい現在のステンレスバネに改良しました。以前のタイプにバネのみ交換(220円)できます。


楽に切れる事も大切ですが、それ以上に良いのは導管をつぶしにくいので、花が長持ちする事です。花のある生活って素敵ですよね。


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