GWに思うこと。
工業デザイナーブログというタイトルの割に何をしているか分からないなぁと感想を持たれる人も多いでしょう。
デザイナーの仕事は、外から見てそれほどドラマチックではないと思います。(私だけかもしれませんが。)
通常は、クライアントから問い合わせが有ったり、紹介されたりで訪問し依頼の内容を聞くところから始まります。最近では初めに守秘義務契約を結ぶケースがほとんどです。
デザインした商品が発売されれば、オープンになっている範囲で公表することが出来ます。私の場合、新潟県内のそれも燕三条を中心にしたエリアがマーケットなので公表することが必ずしも宣伝効果にはつながりません。また、公表しなくても風評で伝わります。
これは新潟県に限った事でなく、地方ではどこでもそうではないでしょうか。情報がオープンにしにくい地方に工業デザイナーが少ない理由の一つだと思います。
新潟でも短期的には工業デザイナーが居ない訳では有りませんが長く続きません。また、グラフィックだったりインテリア(店舗など)だったりをやっていて、むしろそちらの方が主になっている事務所は有ります。
店舗などの場合は、オーナーが居て「こんな店舗にしたい」というニーズがはっきりしているのではないかと推測します。そうでなくても、具体例を示し「こんな感じ」を絞り込み、物件に合わせてアレンジすれば良さそう。グラフィックも「こんな感じ」という具体例が示しやすいと思います。
その上、実現したものはオーナーの満足度が高く、かりにお店が流行らなかったり、商品が売れなくてもデザインが原因とはされにくいでしょう。
工業デザインは違います。完成した商品は地域を離れ海外へも届けられます。オーナー(クライアント)の「こうしたい」が有ってもそのままつくることが出来ません。他の商品に似ていはならないし、マーケットに合わせたり、作れる条件に合わせて目標設定から変えなくてはなりません。もちろん、規模の大きなクライアントの場合はそのような事をする必要はありません。小規模であってもしっかりしたメーカーは外部のデザイナーを必要としていません。外部のデザイナーにお金を払ってデザインをお願いするといったケースがすごく少ないのです。
一方で、東京の工業デザイナーから見ると新潟県や燕三条は沢山の仕事のある地域と捉えられています。ものづくりが盛んでデザインに対して理解のある企業が多い場所だと。実際グッドデザインの申請数は大都市圏を除けば新潟はかなり上位です。中小企業のグッドデザイン受賞数が多いのも特徴です。
地元のデザイナーが活用されるケースがきわめて少ないのに、東京ではそう感じない。理由の一つが行政の行うデザイン振興事業です。行政は地域の企業支援を目的に補助金を使って著名なデザイナーをドンドン連れてきます。情報が偏るのかどこの地域でも同じ時期に同じデザイナーが活用されます。行政から見ると「プロダクト」とか「グラフィック」という括りで判断するようで、自動車や家電、時には建築といった分野で実績を上がられた方に頼めば生活雑貨や利器工匠具くらいわけなくデザインできると考えるようで、毎年のように著名なデザイナーが新潟の地を訪れます。
結果として、造形力に優れた完成度の高いものが完成します。これが「デザイン」ということになります。売れる事は初めから求められていませんから商品として成功する事は有りません。
注目を集めたり、イメージアップには貢献します。関わった企業は大変な思いはするでしょうが、投資金額は(補助金だから)少なく勉強になるし企業イメージの向上にはつながるので悪くは無いでしょう。こうして、少数の企業のメリットと行政の実績と引き換えに、距離のある企業からはデザインやデザイナーに関わっても商売上の利益なし。ましてや地方のデザイナーなんてイメージアップ効果も無しということになるのです。
私は新潟で22年間にわたり工業デザイン事務所を続けてきました。積極的に行政の事業にも参加し窓口の担当者とも交流が有ります。皆さん一生懸命に地域の為に頑張っています。
頑張るだけではダメな時代になりました。成果が上がらない事は頑張って続けるのではなく、積極的に見直されるべきです。
「売れる事」を担保できる人はいません。ただ売れるための仕組みをどう考え結果どの様な成果につながったのかは分かります。もちろん同じことをしても同じ結果にはなりません。その過程に企業と一緒に関わる存在としてデザイナーがいます。それを支援しチェックしデータベース化することで情報が地域の企業に広く財産として残せる役割を行政が担えばよいのです。地域のデザイナーに広く開発に参加する機会を与え、少数でも成功例の創出を目指し三条市が「ものづくり補助金」を活用しはじめました。
他の行政では4月で締め切る募集を2か月遅くして6月に、その2か月の間に地元のデザイナーと企業にデザイナーをどの様に活用するか?デザイナーはどの様に企業と関われるかの勉強会を複数開催し企業とデザイナーの交流の機会を設ける。事業計画にデザイナーも関わることでこれらを実現しようという試みです。
市の計画段階からデザイナー意見を取り入れ、行政は前に出すぎず地域のデザイナーに任せているのが大きな特徴です。民間の得意なところは民間に任せるところが従来のやり方と違うし、民間に任せたところは行政の枠に固執しない所が新しい。
年度という縛りがある中でどれくらい成果が上げられるか分かりませんし、むしろ上げられないかもしれません。でも、地域のデザイナーの活用によりものづくりの地域として次に残せる土台ができる事を期待しています。
5/17日に13:00~燕三条リサーチコアにてセメントプロデュースデザインの金谷代表を招いての第2回勉強会が開催されます。もちろん、三条市の方でなくても参加できます。
デザイナーの仕事は、外から見てそれほどドラマチックではないと思います。(私だけかもしれませんが。)
通常は、クライアントから問い合わせが有ったり、紹介されたりで訪問し依頼の内容を聞くところから始まります。最近では初めに守秘義務契約を結ぶケースがほとんどです。
デザインした商品が発売されれば、オープンになっている範囲で公表することが出来ます。私の場合、新潟県内のそれも燕三条を中心にしたエリアがマーケットなので公表することが必ずしも宣伝効果にはつながりません。また、公表しなくても風評で伝わります。
これは新潟県に限った事でなく、地方ではどこでもそうではないでしょうか。情報がオープンにしにくい地方に工業デザイナーが少ない理由の一つだと思います。
新潟でも短期的には工業デザイナーが居ない訳では有りませんが長く続きません。また、グラフィックだったりインテリア(店舗など)だったりをやっていて、むしろそちらの方が主になっている事務所は有ります。
店舗などの場合は、オーナーが居て「こんな店舗にしたい」というニーズがはっきりしているのではないかと推測します。そうでなくても、具体例を示し「こんな感じ」を絞り込み、物件に合わせてアレンジすれば良さそう。グラフィックも「こんな感じ」という具体例が示しやすいと思います。
その上、実現したものはオーナーの満足度が高く、かりにお店が流行らなかったり、商品が売れなくてもデザインが原因とはされにくいでしょう。
工業デザインは違います。完成した商品は地域を離れ海外へも届けられます。オーナー(クライアント)の「こうしたい」が有ってもそのままつくることが出来ません。他の商品に似ていはならないし、マーケットに合わせたり、作れる条件に合わせて目標設定から変えなくてはなりません。もちろん、規模の大きなクライアントの場合はそのような事をする必要はありません。小規模であってもしっかりしたメーカーは外部のデザイナーを必要としていません。外部のデザイナーにお金を払ってデザインをお願いするといったケースがすごく少ないのです。
一方で、東京の工業デザイナーから見ると新潟県や燕三条は沢山の仕事のある地域と捉えられています。ものづくりが盛んでデザインに対して理解のある企業が多い場所だと。実際グッドデザインの申請数は大都市圏を除けば新潟はかなり上位です。中小企業のグッドデザイン受賞数が多いのも特徴です。
地元のデザイナーが活用されるケースがきわめて少ないのに、東京ではそう感じない。理由の一つが行政の行うデザイン振興事業です。行政は地域の企業支援を目的に補助金を使って著名なデザイナーをドンドン連れてきます。情報が偏るのかどこの地域でも同じ時期に同じデザイナーが活用されます。行政から見ると「プロダクト」とか「グラフィック」という括りで判断するようで、自動車や家電、時には建築といった分野で実績を上がられた方に頼めば生活雑貨や利器工匠具くらいわけなくデザインできると考えるようで、毎年のように著名なデザイナーが新潟の地を訪れます。
結果として、造形力に優れた完成度の高いものが完成します。これが「デザイン」ということになります。売れる事は初めから求められていませんから商品として成功する事は有りません。
注目を集めたり、イメージアップには貢献します。関わった企業は大変な思いはするでしょうが、投資金額は(補助金だから)少なく勉強になるし企業イメージの向上にはつながるので悪くは無いでしょう。こうして、少数の企業のメリットと行政の実績と引き換えに、距離のある企業からはデザインやデザイナーに関わっても商売上の利益なし。ましてや地方のデザイナーなんてイメージアップ効果も無しということになるのです。
私は新潟で22年間にわたり工業デザイン事務所を続けてきました。積極的に行政の事業にも参加し窓口の担当者とも交流が有ります。皆さん一生懸命に地域の為に頑張っています。
頑張るだけではダメな時代になりました。成果が上がらない事は頑張って続けるのではなく、積極的に見直されるべきです。
「売れる事」を担保できる人はいません。ただ売れるための仕組みをどう考え結果どの様な成果につながったのかは分かります。もちろん同じことをしても同じ結果にはなりません。その過程に企業と一緒に関わる存在としてデザイナーがいます。それを支援しチェックしデータベース化することで情報が地域の企業に広く財産として残せる役割を行政が担えばよいのです。地域のデザイナーに広く開発に参加する機会を与え、少数でも成功例の創出を目指し三条市が「ものづくり補助金」を活用しはじめました。
他の行政では4月で締め切る募集を2か月遅くして6月に、その2か月の間に地元のデザイナーと企業にデザイナーをどの様に活用するか?デザイナーはどの様に企業と関われるかの勉強会を複数開催し企業とデザイナーの交流の機会を設ける。事業計画にデザイナーも関わることでこれらを実現しようという試みです。
市の計画段階からデザイナー意見を取り入れ、行政は前に出すぎず地域のデザイナーに任せているのが大きな特徴です。民間の得意なところは民間に任せるところが従来のやり方と違うし、民間に任せたところは行政の枠に固執しない所が新しい。
年度という縛りがある中でどれくらい成果が上げられるか分かりませんし、むしろ上げられないかもしれません。でも、地域のデザイナーの活用によりものづくりの地域として次に残せる土台ができる事を期待しています。
5/17日に13:00~燕三条リサーチコアにてセメントプロデュースデザインの金谷代表を招いての第2回勉強会が開催されます。もちろん、三条市の方でなくても参加できます。
コメント
コメントを投稿