ゴミ拾いトングのデザインから学んだこと
夏といえば海を思い浮かべます。多くの人が訪れ、にぎやかに過ごした後には、美しい景色と同時にゴミが残されることもあります。
私は、こうしたゴミ拾い活動に使うトングをデザインしたことがあります。きっかけは2010年頃、三条商工会議所が主催する講演会に講師として招かれた際に、永塚製作所の能勢専務(現・社長)と出会ったことでした。
永塚製作所は、火バサミや火おこし、十能、移植小手といった金属製の生活道具を製造する工場です。専務は異業種から入社して3年目でしたが、コミュニケーション能力が高く、業界外にも幅広い人脈を持っていました。話をするうちに、彼が関わる「ゴミ拾いを中心としたコミュニティ」の存在を知り、その活動の延長としてゴミ拾い用のトングの開発に取り組むことになったのです。
完成したトングは、従来の火バサミを少し改良して、先端にシリコンゴムの部品を加えたシンプルなものでした。私自身、グリーンバードの清掃活動に参加した際、軍手で火バサミが滑りやすかったり、先端が通行人に当たりそうで不安を感じた経験がありました。その実感をもとに改良を加え、試作を重ね、保持力を数値化して検証しました。金属加工を専門とする工場では異素材を扱うことが少ないため、シリコンゴムの成型を行う工場を紹介するなど、新しい連携も生まれました。
2012年には、この「ゴミ拾いトング」がグッドデザイン賞でBEST100に選定され、さらに「ものづくりデザイン賞」を受賞しました。火を扱う道具であった火バサミを環境活動の道具として再設計した点、そしてコミュニティとのつながりを意識した開発姿勢が評価されたのです。この年の授賞式ではステージ上でプレゼンテーションやパネルディスカッションに参加する機会もあり、貴重な体験となりました。
永塚製作所にとっても、この受賞は特別な出来事でした。地元のテレビ局が取材に訪れ、専務からは「社員が自宅で、子どもに“お母さんの会社テレビに映っていたよ”と言われた」とか、「配達の人が、社名入りの車で河原でサボっていられなくなった」といった声があったと聞きました。デザイナーに依頼した初めての案件で、商品が売れるということ以外にも、社員や地域に誇りを感じてもらえる効果があったのだと思います。
私自身も、この経験を通じて「デザインは売れる・売れないとは違う価値を提供できる」と実感しました。生活道具のデザインであっても、社会活動や環境問題とつながり、さらには工場や地域を幸せにする可能性がある。その気づきは、今のFD STYLEの活動を支える大きな柱になっています。
このトングは、後に FD STYLE の黒いバージョン「MAGIP ZERO」 として展開しました。 名前の「MAGIP」は「魔法のようなグリップ感」から名付けたものです。
👉 MAGIP ZEROはこちらからご覧いただけます。
私は、こうしたゴミ拾い活動に使うトングをデザインしたことがあります。きっかけは2010年頃、三条商工会議所が主催する講演会に講師として招かれた際に、永塚製作所の能勢専務(現・社長)と出会ったことでした。
永塚製作所は、火バサミや火おこし、十能、移植小手といった金属製の生活道具を製造する工場です。専務は異業種から入社して3年目でしたが、コミュニケーション能力が高く、業界外にも幅広い人脈を持っていました。話をするうちに、彼が関わる「ゴミ拾いを中心としたコミュニティ」の存在を知り、その活動の延長としてゴミ拾い用のトングの開発に取り組むことになったのです。
完成したトングは、従来の火バサミを少し改良して、先端にシリコンゴムの部品を加えたシンプルなものでした。私自身、グリーンバードの清掃活動に参加した際、軍手で火バサミが滑りやすかったり、先端が通行人に当たりそうで不安を感じた経験がありました。その実感をもとに改良を加え、試作を重ね、保持力を数値化して検証しました。金属加工を専門とする工場では異素材を扱うことが少ないため、シリコンゴムの成型を行う工場を紹介するなど、新しい連携も生まれました。
2012年には、この「ゴミ拾いトング」がグッドデザイン賞でBEST100に選定され、さらに「ものづくりデザイン賞」を受賞しました。火を扱う道具であった火バサミを環境活動の道具として再設計した点、そしてコミュニティとのつながりを意識した開発姿勢が評価されたのです。この年の授賞式ではステージ上でプレゼンテーションやパネルディスカッションに参加する機会もあり、貴重な体験となりました。
永塚製作所にとっても、この受賞は特別な出来事でした。地元のテレビ局が取材に訪れ、専務からは「社員が自宅で、子どもに“お母さんの会社テレビに映っていたよ”と言われた」とか、「配達の人が、社名入りの車で河原でサボっていられなくなった」といった声があったと聞きました。デザイナーに依頼した初めての案件で、商品が売れるということ以外にも、社員や地域に誇りを感じてもらえる効果があったのだと思います。
私自身も、この経験を通じて「デザインは売れる・売れないとは違う価値を提供できる」と実感しました。生活道具のデザインであっても、社会活動や環境問題とつながり、さらには工場や地域を幸せにする可能性がある。その気づきは、今のFD STYLEの活動を支える大きな柱になっています。
このトングは、後に FD STYLE の黒いバージョン「MAGIP ZERO」 として展開しました。 名前の「MAGIP」は「魔法のようなグリップ感」から名付けたものです。
👉 MAGIP ZEROはこちらからご覧いただけます。
コメント
コメントを投稿